2025/11/16
セブで感じた「デジタル」と「アナログ」──これからの歯科医療を考える
横浜市港南区港南台にあります。医療法人Dental Community吉田です。
フィリピン・セブで開催された「WCUPS 2025」から戻って一週間。
あの熱気と刺激に満ちた日々を思い返しながら、日本の歯科医療の"いま"を改めて考えさせられました。
世界では、インプラント治療におけるデジタル技術の導入がますます進化しています。3DスキャナーやCT、3Dプリンターを駆使した「デジタルワークフロー」は、精度が高く、治療の効率化にも大きく貢献します。私たちのクリニックでも、CERECをはじめ、ブライトCTなど術前のシミュレーションからサージカルガイド、補綴設計までデジタル化を進めています。
しかし同時に、セブでのディスカッションや各国の先生方との交流を通じて、「アナログの感覚」の大切さも再認識しました。どんなに精密なデジタルツールがあっても、最後に患者さんの"噛む""話す""笑う"を支えるのは、術者の経験と感性です。機械だけでは補えない"人の技術"が、確かにそこにあります。
一方で、デジタル機器の導入には大きなハードルもあります。CTや口腔スキャナー、CAD/CAMシステムなどの設備は高額で、さらにソフトウェアのアップデートやメンテナンスにも継続的なコストがかかります。海外の医院では自費診療が主流のため、こうした投資が回収しやすい構造がありますが、日本の保険制度下ではそうはいきません。
次年度の診療報酬改定で「デジタルデンチャー(義歯)」が保険導入される見込みですが、実際にはデジタル設備を導入できる一般歯科医院は限られるでしょう。制度上は"デジタル化推進"と掲げられていても、現場には依然として「設備投資ができない」「保険点数が低く採算が取れない」という現実があります。
セブで感じたのは、日本の歯科医療が世界的に見ても高いレベルの治療を行っている一方で、「構造的な不利」を抱えているということ(これを話すと、失笑されます)患者さんに最善の医療を届け続けるためには、私たち歯科医師が学び続け、そして"正しい情報"を共有していくことが不可欠です。
吉田歯科クリニックでは、最新のデジタル技術を積極的に取り入れながらも、人の感覚を大切にした温かい治療をこれからも追求していきます。
