2026/08/17
2026年の保険改定で、部分入れ歯に起きている変化
吉田歯科クリニック 理事長 吉田です。
2026年6月の歯科保険改定により、部分入れ歯のクラスプ(残っている歯にかける金具)に使用できる材料の取り扱いが変わりました。
クラスプは、単に入れ歯が外れないようにする金具ではありません。入れ歯の沈み込みを防ぐ「支持」、横揺れを抑える「把持」、外れにくくする「維持」という重要な役割があります。この3つが適切に働くことで、入れ歯が安定し、残っている歯や歯ぐきへの負担も軽減できます。
今回の改定では、保険診療で鋳造クラスプを製作する場合、コバルトクロム合金の使用が基本となりました。しかし、この合金は融点が高く、非常に硬いため、鋳造・研磨・適合調整に専用設備と高い技術が必要です。従来の材料と同じ感覚では製作できず、対応できる歯科技工所は限られます。現状では、設備の整った大規模な技工所が中心となり、地域の技工所では対応が難しいことも少なくありません。
そのため実際の保険診療では、ワイヤーを曲げて作る線鉤を選択せざるを得ないケースが増えています。線鉤にも適応はありますが、症例によってはレストや把持を十分に設計しにくく、金具が開いて緩みやすい、入れ歯が動きやすいなど、従来と同じ安定性を確保することが難しくなっています。
当院では、保険の入れ歯でも可能な限り丁寧に設計・調整します。ただし、制度上選べる材料や構造には限界があります。自費診療へ誘導するためではなく、保険で「できること」と「難しくなったこと」を正しくお伝えし、納得したうえで治療方法を選んでいただきたいと考えています。
