2026/07/12
保険改正から改めて、歯の価値を考える
こんにちは。横浜市港南区港南台にあります吉田歯科クリニック院長の吉田です。
2026年6月に歯科医療の保険改正が行われ、約1か月が経ちました。
患者さんには見えにくい部分ですが、歯科医療の現場では少しずつ大きな変化が起きています。
例えば、金属価格の高騰などを背景に、保険診療で使用される材料は大きく変化しています。以前は金属を使用することが多かった被せ物も、現在ではCAD/CAMという白い材料が主流になりつつあります。
白い歯が入ることは、見た目の面では患者さんにとって大きなメリットです。
しかし、「白い材料だから、必ず良い治療」というわけではありません。
CAD/CAM材料は金属やセラミックとは性質が異なり、噛む力や使用する部位、歯ぎしりや食いしばりの程度によっては、摩耗や破折、脱離などのリスクがあります。
特に今後、多くの患者さんに長期間使用されるようになると、材料がすり減ることで噛み合わせが変化したり、反対側の歯とのバランスに影響したりする問題が、より明らかになってくる可能性があります。
「白くなったから安心」ではなく、その歯の位置や噛み合わせ、患者さんの生活習慣まで含めて材料を選択することが大切です。
一方、義歯、いわゆる入れ歯の分野でも課題があります。
保険診療では金属を十分に使用できる設計が難しくなり、ワイヤーを主体とした義歯では、剛性や安定性が得にくい場合があります。
使用しているうちにワイヤーが開き、緩くなる。入れ歯が動きやすくなり、噛みにくくなる。支えている歯に負担が集中する。
こうした問題は、実際の診療現場でも無視できません。
より丈夫で薄く、安定性を得やすい金属床義歯という選択肢もありますが、患者さんからは「高いですね」と言われることが少なくありません。
もちろん、費用はとても重要です。
しかし、毎日使い、食事や会話を支える入れ歯を、単純に価格だけで判断してよいのか。私たち歯科医療者も、患者さんと一緒に考えていく必要があります。
さらに深刻なのが、歯科技工士の減少です。
被せ物や入れ歯は、歯科医師だけでは完成しません。歯科技工士の知識と経験、手作業による細かな調整があって、初めて患者さんのお口に合うものが出来上がります。
しかし、材料費や人件費が上がる一方で、その技術に十分な価値がつけられているとは言いにくく、担い手も減少しています。
日本には、誰もが一定水準の医療を受けられる素晴らしい国民皆保険制度があります。
その一方で、海外と比べると「歯や口の健康に投資する」という意識は、まだ十分に根付いていないとも感じます。
車やスマートフォン、旅行には費用をかけても、歯の治療にはできるだけ費用をかけたくない。
しかし、自分の歯で食べられること、しっかり噛めること、自然に笑えることは、人生の豊かさそのものです。
私自身、テニスを続ける中で、健康は決して当たり前ではないと実感しています。
身体も歯も、悪くなってから元に戻すことは簡単ではありません。
だからこそ、悪くなる前に守ること。必要な場面では、将来まで考えた治療を選ぶこと。そして治療後も定期的に状態を確認することが大切です。
「保険診療か、自費診療か」だけではなく、
「10年後、20年後も、自分の歯で食事を楽しめるか」
私たちは、その視点を大切にしています。
吉田歯科クリニックでは、材料の見た目や価格だけでなく、それぞれのメリットとリスクを丁寧にお伝えし、患者さんと一緒に将来のお口の健康を考えていきたいと思います。
